訪れる災厄

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 アレックスは混乱する思考をなんとかまとめ、心あたりをさがす。  人の恨みを買うようなことをした覚えはない。 ましてや、こんな白昼堂々とである。 しかし、恨みを買ってなくても標的にされる可能性に、残念ながら一つだけ思い当たる。  そう、昼間でも、夜でも、世間の常識から外れた馬鹿どもからである。 「……ちくしょう!」  アレックスは切なげな表情を浮かべ、誰にも聞き取れ無いほどの小さな声で毒づく。 そして、ハンディーデバイスを横目で確認し、不審者との位置関係を把握すると、教室から一気に駆け出した。 「そこの君!止まりなさい!早く、そんな物はしまって!」  階段の下から、教師の声が聞こえる。 おそらくそれは、不審者に向けて発せられた言葉だろう。 それに押されるように、数人の生徒が階段を駆け上がって来た。 (くそっ!そんな物ってどんな物だよ!)  もし襲われる心あたりが当たっていれば、教師がしまって欲しいのは穏やかな物ではあるまい。 少なくとも花束やプレゼントの類ではない。
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