訪れる災厄

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「何でも文明の力に頼ってはいかん!教科書もノートも、鉛筆で真黒になるくらい汚して、初めて頭に入るんだ!」  そう言うと教師は、アレックスのパラパラ漫画を堪能したのか、取り上げた教科書をアレックスの頭上へかぶせた。 「お前達が毎日おもちゃにしているハンディーデバイスだってな、昔は携帯電話といって、私が初めてそれを持った時はウェブも出来なければカメラも付いていない。ホログラム(立体画像)はおろか、白黒の液晶で、本体より大きいアンテナがついていたんだぞ」  教師はそこまで言うと、踵を返し、教卓へ向かって歩き出す。  教室は僅かにざわめき、「えー?うっそだー」と野次を飛ばす者、「アンテナってなに?」と小さく声を交わす者、反応はまちまちである。  教師は教室の前方に大きく取り付けられた電子ホワイトボードにたどり着くと、振り向いて言った。 「黒板消すぞ!」 黒板という単語を聞いて、教室内から小さな笑いが起きる。
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