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教師は電子ホワイトボードの端を、人差し指と中指で二回叩くと、一瞬の内にそれに書かれた文字が消え去った。
「先生!それじゃあ先生も、ホワイトボードを使わずに紙とシャープで授業すればいいんじゃないですか?」
生徒の一人が発言し、それに続いて笑いが起きる。
教師は、呆れて物も言えないといった素振りで、ため息交じりに頭を振った。
キーンコーンカーンコーン……
ちょうどそのタイミングで、授業を終えるチャイムが鳴る。
次の時間は、待ちに待った昼食の時間である。
「アレックス、お前だけに特別の宿題だ。月曜日までに、その落書きを全部消してこい!」
アレックスは絶望に打ちひしがれた。
それもそのはず、完成までに二週間もかけた大作だからである。
抗議の声を上げるが、教師は頑として首を縦に振らず、やがてアレックスはがっくりと肩を落とした。
「しかし……。チャイムの音は、いつまでたっても変わらんな……」
教師はそうつぶやき、白髪交じりの頭を数度撫でた。
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