香に包まれて

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「神無月さん こっちで着替えてくださいね」 五十嵐さんが手を試着ルームみたいな個室に向けた んー 堅苦しいの嫌いなんだよねー 美穂は個室に向かいながら思った 「…あのさ」 思い切ってきりだしてみた 「なんでしょうか?」 高木さんがツインテールを揺らして 五十嵐さんが眼鏡を片手でくいっと上げながら こちらを向いた 「“神無月さん”じゃなくて名前で“美穂”って呼んでくれてOKだから!!」 ぐっと親指を突き立てて 二人に言った 五十嵐さんは顔色を変えずに返事した 高木さんは少し微笑んでみせる 「あなた達のことは何て呼べばいい?」 聞き返すと 「どうぞ ご自由に」と 事務的な返事が返ってきた あまり仲良くなりたくないような雰囲気の五十嵐さんはよそに 「そう?じゃあ萌ちゃんに柚乃ちゃんってこれから呼ぶね またまたよろしく!!」 はにかんで言うと 萌ちゃんと柚乃ちゃんは少し照れながら笑ってみせた 後で橘君にも言っとかないとね 少しほくほくしながら 新しいバイト先の制服に 袖を通した 速く仕事覚えて 夢に近づかなくちゃ!! 今の美穂は気合い、そのものだった
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