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いつの間にか窓の外の風景にピンク色の看板は消え失せ、無機質な低い建物が勢いよく過ぎ去ってくものへと変わっていた。
どうやら僕は本当にぼんやりとしてしまったらしい。
電車は動き出し、出発のホイッスルももう鳴っていたようだ。
「あぁ……あの本さ、一番最初に貸してもらったやつだった。そういえば昨日、それでナノハに電話したんだけど」
「あ、ホントにっ!? 同じ本屋で買ったからカバーで間違えちゃったんだー。失礼しましたっ!」
「いや、いいけど。……ってか、もう本いいや」
「え!? なんで? 次のも面白いよ?」
「ナノハと話す。本読まないで、ナノハとちゃんと話したい」
「何を? 日本の少子化について? 野党のマニフェストについて? 駅前のラーメンのマズさについて? 家を出るとき右足と左足どっちから出るかについて?」
全部今の僕にとってはどうでもいい話題すぎてツッコミが入れられない。
ナノハは尚も続ける。
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