相棒の相棒(1)

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      2        今から10年前の話だ。 その後、彼女を見つけた時には、すべてが遅かった。温もりを失った体に触ると氷のように冷たく。そして脆かった。 「ようこそ! 水と空の街」 東都高速道路を出ると、そんな看板が道路脇に立て掛けられていた。 水空市は水と空が綺麗な街。水辺の公園や夜空に輝く星を眺める展望台など、水と空に関係のある施設が多く建てられている。 「いらっしゃい!」 東都タワーが一直線に眺められる商店街。ここの開店は朝早く、ちょうどサラリーマンや学生の通勤時間からだ。 「おっ、栞ちゃん。今日も可愛いね」 準備をしている八百屋の主人が、店の前を通り過ぎる藤代栞に声を掛けた。栞もまんざらでもないように喜ぶ。 「今日もってそんなぁ。当たり前ですよ」 明らかなお世辞なのだが、栞はその言葉を鵜呑みにしてしまった。
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