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今から10年前の話だ。
その後、彼女を見つけた時には、すべてが遅かった。温もりを失った体に触ると氷のように冷たく。そして脆かった。
「ようこそ! 水と空の街」
東都高速道路を出ると、そんな看板が道路脇に立て掛けられていた。
水空市は水と空が綺麗な街。水辺の公園や夜空に輝く星を眺める展望台など、水と空に関係のある施設が多く建てられている。
「いらっしゃい!」
東都タワーが一直線に眺められる商店街。ここの開店は朝早く、ちょうどサラリーマンや学生の通勤時間からだ。
「おっ、栞ちゃん。今日も可愛いね」
準備をしている八百屋の主人が、店の前を通り過ぎる藤代栞に声を掛けた。栞もまんざらでもないように喜ぶ。
「今日もってそんなぁ。当たり前ですよ」
明らかなお世辞なのだが、栞はその言葉を鵜呑みにしてしまった。
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