679人が本棚に入れています
本棚に追加
/692ページ
エヴァン・ダグナ
涼しげな風が、窓の外に流れている。
誰もが皆、その風のように目の前の現実が流れていったら……と、願っていた。
――俺ももちろんその一人で、越えがたい困難にぶつかっていく友人達の隣に立ち、自分の名前が呼ばれることを恐れ、うつむいている。
「――エヴァン・ダグナ」
「……はい」
重々しい空気の中、俺は一喜一憂する友達の横を抜け、前に進み出た。
俺は、やるだけのことをやったと、信じている。
だから、きっと、大丈夫だ……。
俺は与えられたものを受け取り、席に戻る。
これが、俺の運命を決める書類。
それが死刑宣告にならないように神に祈ってから、一気に開いた。
……。
「……単位全部落としたァァァァ!!」
――俺の名はエヴァン・ダグナ。
たった今、履修していた単位を全て落としてしまった、哀れな十六歳だ。
最初のコメントを投稿しよう!