「始まりは、そんなものさ」と彼は言った。

2/20
679人が本棚に入れています
本棚に追加
/692ページ
エヴァン・ダグナ 涼しげな風が、窓の外に流れている。 誰もが皆、その風のように目の前の現実が流れていったら……と、願っていた。 ――俺ももちろんその一人で、越えがたい困難にぶつかっていく友人達の隣に立ち、自分の名前が呼ばれることを恐れ、うつむいている。 「――エヴァン・ダグナ」 「……はい」 重々しい空気の中、俺は一喜一憂する友達の横を抜け、前に進み出た。 俺は、やるだけのことをやったと、信じている。 だから、きっと、大丈夫だ……。 俺は与えられたものを受け取り、席に戻る。 これが、俺の運命を決める書類。 それが死刑宣告にならないように神に祈ってから、一気に開いた。 ……。 「……単位全部落としたァァァァ!!」 ――俺の名はエヴァン・ダグナ。 たった今、履修していた単位を全て落としてしまった、哀れな十六歳だ。
/692ページ

最初のコメントを投稿しよう!