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会場に近づくにつれ、血臭と死臭が濃くなり、慣れない男は徐々に顔を歪める。
「次は皆さまお待ちかね、サイレントの登場です!!」
「ワァァァァァ!!」
鉄の扉越しに聞こえる歓声は割れんばかりだが、少年は聞き慣れ、特に耳に入っていない。
「ちゃんと行けよ」
扉を開ける前に男は逃げるように次の出場者の元に向かう。
少年は扉を開けた。
負けた方はまた死体を掻き回され、あちこちに肉塊が飛び散っている。
時代錯誤なその会場は半径十五メートルの円形で、その周囲をグルリと観客が囲み、その様は中世のコロシアムを思わせる。
下に目をやれば、舌をベロンと出し、半開きの目で見上げる生首がいくつか転がっているが、見慣れた少年は特にどうとも思わない。ぐにゅっと肉片を踏んでも、少年の歩みに淀みはない。
観客達はこの場の全てを無視している様な、何もかもを柳の様に流す様な、そんな少年の一挙手一投足に興奮し、悲鳴にも聞こえる歓声を上げる。
「オーバーキル! オーバーキル! オーバーキル!」
やがて悪意のコールが始まり、少年は表情の無い顔を対戦相手に向ける。
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