332人が本棚に入れています
本棚に追加
まあ噂は噂、信じるに値しないものなのだが―――
―――その噂の内容が楢葵に絡むものだと、妙に信憑性が増すのである。
理由は楢葵の性格やら行動やらが関係するのだが、それはまだ後の話。
「さてフラン様、そろそろ寝ないと夜が辛いですよ………って、もう寝られたか」
先程の戦闘で散らかった部屋を楢葵が片付けている間に、フランドールはベットで寝息を立てていた。
―――相変わらずこういう行動は早いなぁ………。
そう思いつつ、楢葵はフランドールを起こさないように気をつけて、静かに部屋を後にした。
コツコツと紅い廊下を歩きながら、楢葵はあることについて考えていた。
―――夕餉は何にするかねぇ。
夕飯である。
「オレはデザートに甘いモノを付けてくれたらなんでもいいぜwww」
「いや、デザートじゃなくて夕餉………ってなぜ俺の考えが読めるんだ、透」
突如として現れた男―――透の肩をガシィッと掴みがくがくと揺さ振る。
「揺らすな揺らすな話すからwww知らないかもしれないけど、楢葵が真剣な顔してる時は夕飯の事しか考えてないんだぜwww」
「………フラン様の事を考えてる時は?」
「だいたいにやけてる」
『マジかよ………』と酷く嫌そうに呟いてうなだれる楢葵を、透はけらけらと笑う。
透はこの館の住人なのだが、メイドや執事といった明確な仕事をしているわけではなく、本当に住んでいるだけの住人なのだ。
まあ何もしないわけでなく、頼まれたら買い出しには行く。
ちなみに語尾の『w』は口癖のようなものなのだが、その理由を透は語らないために深く追求する者はいない。
幻想郷に住む者たちは一部を除けば皆訳ありなので、むやみな詮索はしないのが暗黙のルールだ。
最初のコメントを投稿しよう!