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そのまま箸も進み、酒も回ってきたところで。
「ヒック……あんたりゃ風呂はひってこれば~」
完全に呂律がまわらなくなった霊夢にそう提案された。巫女がそれでいいのか。
「んー、じゃあ一番風呂貰うぜ。よろしいですかお嬢様?」
「よろしくも何も、私は流水が苦手だから入れないのよ。
吸血鬼は流水が苦手、ただの湯をはっただけなのなら別だけど、間欠泉から湧き出た温泉なら話は別なの。楢葵一人で入ってきなさい。主を置いて入ってきなさい」
「ぐ、入りずらくなるような言葉を……入りますけど」
お嬢様に若干恨みの篭った視線から逃げるように、俺は神社の裏に向かった。
「何故いる」
完全に入浴スタイルとなり、さあ入るぞうと意気込んで湯の前にきた俺の言葉。
「一番風呂頂いちゃったよ~」
少し顔を朱に染めた萃香が、ちゃんと隠すとこは隠して湯舟に浸かっていた。
おかしい。俺が宴会から離れた時、確かに萃香はまだ酒をぐびぐび飲んでいたはずだ。ここまで来るのに誰にも会わなかったし。
「ほらほら、楢葵も早く入りなよ~」
「入れるか!待ってるから早くあがれよ!」
俺も下は隠していたので事無きを得た。てかあいつが最初に温泉勧めたんだよな?なのに何でいる?
何が何だかわからないまま脱衣所に帰ろうとした時、萃香の独り言が聞こえた。
「あ~残念だねぇ。折角おいしい酒を用意したのに。温泉に入りながら飲むのも結構乙なんだけどな~」
「待つのは性に合わん、やっぱ入る」
誰も俺を責め立てることはできない。
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