巫女と神社と百鬼夜行

7/15

332人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
そのまま箸も進み、酒も回ってきたところで。 「ヒック……あんたりゃ風呂はひってこれば~」 完全に呂律がまわらなくなった霊夢にそう提案された。巫女がそれでいいのか。 「んー、じゃあ一番風呂貰うぜ。よろしいですかお嬢様?」 「よろしくも何も、私は流水が苦手だから入れないのよ。 吸血鬼は流水が苦手、ただの湯をはっただけなのなら別だけど、間欠泉から湧き出た温泉なら話は別なの。楢葵一人で入ってきなさい。主を置いて入ってきなさい」 「ぐ、入りずらくなるような言葉を……入りますけど」 お嬢様に若干恨みの篭った視線から逃げるように、俺は神社の裏に向かった。 「何故いる」 完全に入浴スタイルとなり、さあ入るぞうと意気込んで湯の前にきた俺の言葉。 「一番風呂頂いちゃったよ~」 少し顔を朱に染めた萃香が、ちゃんと隠すとこは隠して湯舟に浸かっていた。 おかしい。俺が宴会から離れた時、確かに萃香はまだ酒をぐびぐび飲んでいたはずだ。ここまで来るのに誰にも会わなかったし。 「ほらほら、楢葵も早く入りなよ~」 「入れるか!待ってるから早くあがれよ!」 俺も下は隠していたので事無きを得た。てかあいつが最初に温泉勧めたんだよな?なのに何でいる? 何が何だかわからないまま脱衣所に帰ろうとした時、萃香の独り言が聞こえた。 「あ~残念だねぇ。折角おいしい酒を用意したのに。温泉に入りながら飲むのも結構乙なんだけどな~」 「待つのは性に合わん、やっぱ入る」 誰も俺を責め立てることはできない。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

332人が本棚に入れています
本棚に追加