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何はともあれ酒に釣られて一緒に入ってしまった。わかりやすく言えば混浴なわけだが。
だからといって突然盛りの獣みたく萃香に襲い掛かったりはしない。
俺にとってのこいつは、気兼ねなく飲みあうことのできる数少ない飲み仲間だ。
萃香と初めて出会ってから時間はそんなに経っていない。でもあっという間に意気投合し、今ではこの仲。
萃香には失礼かもしれないが、俺は萃香を゙一人の女"ではなぐ友人"として意識している。
なので今みたいな状況でも、萃香に欲情その他もろもろすることは断じてない。これだけは断言できる。
「楢葵なんだか難しい顔してるねー。珍しく」
「愛とはなんぞやって考えてた……そう言って信じるか?」
「楢葵が、愛を、真剣に考えるぅ?あはは、明日は槍が降るぞ~」
どういう意味だと言ってやりたかったが、聞きたくない答えが返ってきそうなのでやめておいた。
「ふぅ、にしても最近暇だねぇ。異変もなーんにも起こらないしさっ」
軽く息をついて萃香は杯を傾け、透明な酒を流し込むように飲む。
「最近暇って……こないだ地下でなんかあったろ。今入ってるこれがそうだ」
「あったにはあったけどさぁ……あれが解決した後、ホントにやることないの。興味の湧く事件も何もないし、鳥一羽も落ちて来やしない」
ぶすーっとつまらなさそうに頬を膨らませる萃香。俺としてはのんびり過ごすのが一番なんだが。
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