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萃香の起こした異変は……なんだっけか。確か宴会がどうたらこうたら。
まあなんでもいいか、野暮なことは考えないようにしよう、折角の温泉だし。
今はこうして酒を組み合うことだけを楽しもう。
「……簡潔に言っていいか」
「うん、だいたいわかるけどね」
悠長に酒を飲み過ぎて、気付いた時はすでに遅く。
「のぼせた」
「だよね。顔真っ赤だよ」
抜かったなぁ……季節的にも長湯は大丈夫だと甘いこと考えてたらこの様だよ。ああふらふらする。
「悪い萃香、先に上がらせてもらうぞ」
「上がったら冷たいものを飲めばいいよー」
萃香の心配そうな声が聞こえたが、それすらも何だか遠く感じる。耳の奥がくぐもったように痛い。
あーちくしょーもっと考えて飲めばよかった。
後悔しながら服を着直し神社の表に戻る。更衣場で誰かに会わなくてよかった。今の状態じゃ多分デコピン一発でノックアウトされそうだし。
しかし戻る途中、ふと近くの茂みがざわざわと動いた。
「……誰だ、萃香か?」
返答はなし。もしかしたら猫とかかもしれないが、俺はふらつく体を鞭打って、一瞬で茂みに飛び込んだ。
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