332人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
「…………えぇー……」
飛び込んだ茂みの先にいたのは。
「ミャア」
猫だった。しかも黒猫。
「まぎらわしいことを……」
とりあえず猫の頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
暗くて気付かなかったが、猫は黒いリボンを付けている。
となると、誰かに飼われているのか、はたまた化け猫か。どちらにせよ野良でわなさそうだ。
「ほら、お前もこんな時間にこんな所いたら、妖怪に食われちまうぞー」
俺も妖怪だけどねと自分に自分でツッコミを入れながら、両手を上げてガオーっと威嚇してみる。
「……あなた何してるの?」
あれ、背後からなんかすごく冷たい声が聞こえたような。
正直こんなことしてる所を見られるとは思っておらず、驚き半分羞恥半分といった具合に嫌な汗がぶわっと噴き出す。
ギギギ、という音が聞こえそうな程ゆっくり振り返ると、そこには限りなく無表情な咲夜がいた。
よりによって身内かよ……!
「あなたが何をしようが勝手だけど……さすがに猫相手にそれは……引くわ」
ぐふぅ。
言葉のナイフで胸をえぐられ、何て言うか形容しずらい痛みが俺を襲った。
「しかも猫にリボンまで付けて……どんなプレイよ」
「待てやオイ」
プレイて、いやプレイて。
最初のコメントを投稿しよう!