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「えっと嘘楽さんや、帰って来たというのは……何かね、ここに住んでいる、そういうことかね?」
「住んでるっていうか……まあ居候みたいなものかな」
「居候だってよ」
「つまり同居ね」
『世も末だな(わ)』
最後だけ俺達の声がハモる。これこそ紅魔館驚異の意志疎通能力。
そして初対面の相手にもどかどか踏み入れる図々しさも忘れてはいけない。
でもまずは挨拶と自己紹介、これ鉄則な。
「ふーん、手品ねぇ」
誤解も晴れた所でお互いに簡単な自己紹介を済ませたのだが、なんと嘘楽は手品が得意らしい。
里でも手品を披露して生活費を稼いできたそうな。
「たしか咲夜もできたよな?手品とかマジックとか」
「タネも仕掛けもないわよ」
実際本当に仕掛けゼロだからたちが悪い。
その後もまあ最近何があったかとか喋りに花を咲かせていたのだが、そういえば俺達帰ろうとしてた途中じゃねーか。
「悪い嘘楽、俺等もう帰らなきゃならん」
このままだと朝になりかねん。片付けも終わってないから急がねば。
「吸血鬼だもんな……朝陽は毒になるのか。なら早く帰った方がいいのかな」
「むしろ帰らないとやばい」
主が目の前で朝陽に焼かれる光景だけは勘弁。
慌てて片付けようとしたが、嘘楽の「大きい荷物は置いといてまた今度取りに来ればいい」という厚意に甘えて、とにかく急いで帰ることに。
「ろくに話しが出来なくて悪かったな、次は茶でも飲みながらゆっくりしようや」
「その時はオレの手品を見せるよ」
軽い別れの挨拶を交わし、俺達は神社を後にした。
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