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「師匠ー、家の前に猫がいましたよー。ほらコレ黒猫ですよ」
「おやおや、こんな場所に猫とは珍し―――げっ」
「どうしました?」
「逃がしてきなさい今すぐ。情をかけてはいけませんよ、かけるだけ無駄ですから」
「無駄ってどういう……ああ、リボンが付いてるから化け猫だとかそんな理由ですか?」
「あながち間違いではないですね。とにかく逃がしてきなさい」
「わかりましたよぅ」
「ただいまです師匠、とりあえず陽の届く場所に逃がしてきましたよ」
「ご苦労様です。そこまで遠くに逃がしたならさすがにもう来ないでしょう」
「……師匠って猫苦手でしたっけ?」
「いえいえ。むしろ愛好心が湧くほどです」
「ならどうして逃がしたんですか?そんなにお好きなら撫でてあげるくらい……」
「簡単です。あれは猫じゃないからです。わかったならさっさと中断していた薬草採取に戻ってください。調合待ちなんですから僕」
「なんだかよくわかりませんけど……わかったふりして行ってきます」
「そうそう、何事も知りすぎるのは良くありませんからね。あぁ、暗くなる前に帰ってくるんですよー」
「いつもこの辺暗いんですけどね」
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