串と白沢と土地神様

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それなりに寒かった冬も過ぎ、ようやく幻想郷にも春が来た。 里の人間も徐々に厚手から薄手の衣服へと衣替えするなか、俺は熱をよく吸収する真っ黒な執事を涼しい顔でピシッと着こなしています。 嘘です暑いです。 「ああもう、何で春になった途端こんなに暑くなるかなぁ。せめて暖かい時期挟めよ」 ここは里のとある団子屋。里を訪れたら結構な頻度で入る店だ。 その店内で愚痴りながら団子(黒蜜)を頬張る俺、そして――― 「……楢葵暑がり」 横で同じく団子(みたらし)を食べている変わった衣服の少女。端から見たら異色の光景、現にこの前この店の店長に『兄ちゃんあの娘とどういう関係なんだ?』と聞かれた。 この娘は俺の昔からの知り合い(らしい)で、この里を含む周辺の土地神だ。 外見はお嬢様や萃香と同じぐらい幼く、変わった衣服を着ているので目立つはずなのだが、技なんだか能力なんだかで自分を相手の対象から外すことでそれを防いでいるらしい。 ただし常にソレをしているのではなく、こうやって何かを食べている時のように気を抜いている時はしない、疲れるから、と言っていた。 ともあれ。 色々謎が多い娘なのだけれども、俺の大切な友人なのだ。細かい所は気にしない。てか今は団子食べたい。次は餡にするかな、いや待てヨモギも捨て難い。 「……おかわり。黒蜜とヨモギと餡」 一瞬で解決されました。よく食べる娘です。
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