串と白沢と土地神様

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寺子屋に行く途中菓子屋で饅頭をいくつか購入し、さらにそこで目を奪われた大福を思わず買い食いしてしまったので、向こうに着いたのはちょうど授業が終わった頃だった。 まあこちらとしては好都合なのだが。寄り道して正解だったな。 玄関口で授業を終えた子供たちを見送っていると、服に架かる小さな力に気付いた。 見ると、少年が服の端を引っ張っていた。 「どうした?」 「兄ちゃん、その子だれ?」 その子とはとっちーのことか。『子』なんて年じゃないんだけど。 「ああ、この子は俺の知り合いで、土地―――」 いや待て。ここでとっちーの正体が土地神ってことを教えるのはまずい。彼女自体ほとんどそのことを回りに言おうとしないのに、俺が言ってしまったら台なしだ。 考えろ、土地から始まる言葉を! 「と……土地主の娘だ!」 我ながら苦しい答えだ。 しかしまだまだ純粋無垢な心を持っている少年はまったく深く考えずに「そうなんだ」と言い残して行ってしまった。 よもや寺子屋でこんなことになろうとは思いもしなかった。興味と関心は時に災いを招くってのは本当だなと確信する。 「……楢葵、なんで嘘をついたの?」 「わざわざ公表してないことをむやみやたらに言うと、お前に迷惑がかかるから」 隠していることをばらされれば、本人もショックだろうし。 「……ありがとう」 微かにそう聞こえた気がしたが、とっちーは変わらず無表情のままだった。
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