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「話すって、え、いいのか?」
「かまわない。今日はそのために来た」
彼女の瞳は揺らいでいない。どうやら本当にそのつもりのようだ。
「すまない、言いにくい事だったならべつに話さなくてもいいんだ」
慧音は事情を朧げながら察したのか申し訳なさそうな顔をしたが、俺は慌ててそれを否定する。
「違う違う。たしかに話しづらい内容ではあるけど、今日はこのため、俺含めこの娘の事を話しに来た……らしいから」
最後で頼りなくなった。
「……どうやらなかなかに複雑な事情のようだ」
「かなりな」
他言無用、さらに隠蔽工作までしてたからな。
「……わたしからお話しします、慧音さん」
「あ、あぁ。頼む」
「むぅ……楢葵が記憶喪失だったとは、俄かに信じがたいな」
傍らのとっちーが一通り話し終わった後、慧音は信じられないと目を細めた。
「まあ今までずっと隠してたからな」
「それにその娘が前に言っていた土地神様……なのだろう?聞いた話とかなり違う関係の気がするのだが」
そういえばこの前謎の少女にストーキングされてるって相談したな。まだとっちーの事を知らなかった頃か。
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