332人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの時はしゃあないって。俺もさすがにまいってたんだから」
「……?」
なんの事だととっちーがこっちを見ている。
言えない。あなたというストーカーに悩んで慧音に相談してましたなんて言えるわけがない。
「まあその件に関しては解決したようだし構わないのだが……私ともあろう者がキミの過去を看破できなかったのが心残りだ。
正直、すまないと思っている」
何を思ったのか、唐突に慧音は俺に頭を下げた。
「ちょ、慧音?」
「すまない。キミとは長い友人であるのに、キミの苦しみを分かってやれなかった。いや、気付けなかったんだ。いつも明るく振る舞っていたキミがそんな闇を抱えていたなんて、思いもしなかった。
……こんなことではダメだな、子供たちにも教える側としての示しがつかない」
顔を上げた慧音の瞳は濡れていた。
てか、待て。待ってくれ。なんなんだこの状況。
「ストップ。なんか俺の事で負い目を感じてるようだが、慧音が悪いと俺は思ってないし、第一負い目を感じる必要もないだろ。
それに気付かれないよう振る舞ってた俺が悪いんだし、無用な心配かけたくなかったんだよ」
なんとか慰めようとするが、どうも責任感が人一倍強い慧音は友人として自身の失態に強く責任を感じて自分を許そうとしない。
弱ったなぁ、こういう時のフォローの仕方がわからん。
「とっちー、慧音のフォロー頼めるか?俺だと逆に慧音を追い込みかねん」
「……まかせて」
選手交代、とっちーに慧音を託す。
最初のコメントを投稿しよう!