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「それで、本題とは?」
「はい。これは慧音さんだけに限らず、里の人外の方々にも言えることですが」
言い忘れていたが、慧音は人間ではない。“獣人”だ。人妖とも言われているが。
里の人外と聞いて、慧音の顔にも緊張が走る。
「これから先……いえ、今からでも構いません。常に周りを警戒してください」
「……警戒?なんだ、新手の妖怪退治屋でも来るのか?」
いいえと一旦言葉を切り、俺を、そして慧音を見据える。
これから起こる惨劇も。
「そして……人間に少しでも違和感を覚えたなら、身の危険を感じたのなら、危害を加えられたのなら」
全力でこの里から“逃げて”、そして人間に“関わらない”ようにしてください。
頭に、脳にとっちーの声が響く。まるで命令を直接刻まれたような錯覚。
いや、そんなことよりも。
里から逃げろ?
人間に関わるな?
「それはどういう……」
「……これ以上は言えません。本来この話はわたしのような土地神が踏み入れてはならない領域です。ですから……」
ごめんなさい。そう彼女は苦しげに言った。
「……わかった。里の妖怪たちには私から伝えておこう。違反してまで教えてくれたんだ、無理矢理にでも信じさせる」
「俺もできる限り言っておく。なんだかやばそうだからな」
土地神様直々の頼みだ、全身全霊を尽くしてやる。
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