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そのあとにとっちーと慧音は短く挨拶をすませ、時間も時間なのでおいとました。
つか挨拶は始めにするものなのだが……まあいいや。いまさらだし。
「寒っ」
昼間の熱射は何処へやら、全くをもって春らしくないひんやりとした風が吹く。
熱を吸収する黒い執事服も、吸収すべき熱が皆無に等しいので今や完璧なる役立たずに。
そういやこういう時に『私が暖めてあげる』と言ってくれる女性が欲しいなぁと以前咲夜に話したら、
「頭が春になったのかしら」
と真顔で言われたな。あの時は職務放棄しかけるぐらいのショックを受けた。
そんな傷ついた言葉過去ランキング脳内ベスト6位を思い出していると、とっちーがじっと俺の顔を見ていた。
心なしかその目になにか黒いモノを感じる。
そして彼女の口から出てきた言葉。
「無理」
……何が?
一瞬わけがわからなかったが、よく考えるとさっき俺が考えていたコトへの返答だということに気付く。
いや待て、返信ちゃう。聞いてもないし口に出してもない。なのに何故ばれた?
「えと、どうして俺の考えが」
「……楢葵、考えてること顔に出過ぎ」
え゙。
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