紅魔の住人

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まあ噂は噂、信じるに値しないものなのだが――― ―――その噂の内容が楢葵に絡むものだと、妙に信憑性が増すのである。 理由は楢葵の性格やら行動やらが関係するのだが、それはまだ後の話。 「さてフラン様、そろそろ寝ないと夜が辛いですよ………って、もう寝られたか」 先程の戦闘で散らかった部屋を楢葵が片付けている間に、フランドールはベットで寝息を立てていた。 ―――相変わらずこういう行動は早いなぁ………。 そう思いつつ、楢葵はフランドールを起こさないように気をつけて、静かに部屋を後にした。 コツコツと紅い廊下を歩きながら、楢葵はあることについて考えていた。 ―――夕餉は何にするかねぇ。 夕飯である。 「オレはデザートに甘いモノを付けてくれたらなんでもいいぜwww」 「いや、デザートじゃなくて夕餉………ってなぜ俺の考えが読めるんだ、透」 突如として現れた男―――透の肩をガシィッと掴みがくがくと揺さ振る。 「揺らすな揺らすな話すからwww知らないかもしれないけど、楢葵が真剣な顔してる時は夕飯の事しか考えてないんだぜwww」 「………フラン様の事を考えてる時は?」 「だいたいにやけてる」 『マジかよ………』と酷く嫌そうに呟いてうなだれる楢葵を、透はけらけらと笑う。 透はこの館の住人なのだが、メイドや執事といった明確な仕事をしているわけではなく、本当に住んでいるだけの住人なのだ。 まあ何もしないわけでなく、頼まれたら買い出しには行く。 ちなみに語尾の『w』は口癖のようなものなのだが、その理由を透は語らないために深く追求する者はいない。 幻想郷に住む者たちは一部を除けば皆訳ありなので、むやみな詮索はしないのが暗黙のルールだ。
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