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色が変わる、のだ。
念じればその色に変わる。
少々信じがたいが、例えば白い車を見て
『黒い車黒い車』
と思えば、だんだんそれが黒い車に変わってゆくのだ。
実際には、そう写る自分の目、および脳みそ関係に異常があるわけだが、不思議とそのもの自体の色が変わっていくように見える。
これが非常に厄介だ。
信号待ちでも緊張してしまい、
『青で渡るのだ』
と思うと3つのライト全て青色に輝き始める。
いつ渡れというのだ。
数ヶ月が経った。
もう身の回りほとんどの物が本来の色を失いつつある。
自分自身で変えてしまったのだ。
人の肌は肌色、空は青色、草木は緑色。
それぐらいの大まかな色しか多分残ってないだろう。
青空を赤色に変えてしまうことは可能だが、あまりにも悪趣味で自己嫌悪に陥りそうだ。
趣味のビリヤードでも支障を来たした。
もう色では識別できず、いちいち球の数字を見なければならない。
しかし、ラシャの色を紫、青、茶、白や黒などめまぐるしく変化させ、意外に楽しいことにも気がついた。
この症状にもすっかり慣れ、自分なりに普通と思えるレベルまで生活水準を上げたつもりだ。
僕の妻もこの症状に関心を寄せはじめ、わたしもなってみたいわ、などとほざき始めた次第である。
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