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13年後。
僕は50歳を迎えた。
いつも通り、こんがりと朱色に焼けた食パンをほおばる。
最近、お気に入りの朱色が部屋のいたる所で見られる。
このあいだ、大通りのデパートを全て毒々しく鮮やかな朱色にしてきてやった。
午後からの買い物が楽しみだ。
僕は改めて自由業である自分の仕事に感謝する。
会社勤めだったら、もしかするとクビになっていたかもしれない。
そんなある日、僕自身に革命がおこる。
灯台下暗し
そんな言葉が適当か。
『元の色に戻れ』
なぜ13年間この言葉を思い付かなかったのだろう。
僕は自滅型自己嫌悪に陥りながら、ゆっくりと呟いた。
『元の色に戻れ』
わずか3秒後には、世の中は本来の色を取り戻していた……
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