招かれた実験室

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 ――あの日本列島大震災からおよそ3日間、美香は山で念のため非常用に持ってきた携帯食料を日にちにごと区切って分けて食べていた。  乾パンや、サンドイッチやクラッカーをいくら食べても全く空腹が満たされることは無かった。だが、ダイエットになると思えばキツくない、と自分に言い聞かせ絶え凌ぐしか無かったのである。  ……そんなことよりも、この人達は私をどこに連れて行こうとしてるの? 見るからに憎たらしい顔しちゃって。  美香を取り囲む白衣をまとった者達はストレッチャーに縄で縛られて動くことの出来ない美香を汚らしい目で見ている。その視線に気付いた美香も、自分を取り囲む者達を警戒するかのように睨みつけた。 「貴様! 何だその目は!」  白衣を着た者達の中で一際背の高い男が、声を荒げた。その声には、やはり軽蔑の意図が含まれていることは明瞭だった。 「うるさいわね!! 大体、私をどうするっていうのよ?」  美香はストレッチャーの上でジタバタしたが、縄の縛りがキツすぎてピクリとも動かなかった。  抵抗することも出来ないと悟った美香は、黙って目を瞑った。 「はっはっは! そうだよ。貴様には抵抗など出来ない。そして国民を飢餓から救うために実験台になるのだ」  …………実験台? 国民を救う? 飢餓って、日本が危ないってこと?  3日間も山で生活していたせいか、美香は現在の日本の現状を知らなかった。もちろん、これから政府の企画したゲーム(実験)に自分が参加することになることも。
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