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「ん、んふぅ……」
美香が目を開けると、そこには異様な光景が広がっていた。見渡す限り真っ白の世界。その中に自分と同じ境遇に立たされている人達がたくさんいた。
……まさか、この人達も実験台になるって言うの?
「やぁ、気がついたかい?」
美香が声のするほうを見ると、そこにはサラッとした長い銀髪に綺麗な顔立ちをした青年が自分と同じように縛られていた。
「ど、どうも……」
現実離れしたその青年に圧倒されて、言葉が詰まってしまった。さらに青年の視線が自分に向けられていることに気づくと美香は赤面した。
き、綺麗な男の人だわ。こんな人まで実験台にならないといけないのね……。
実験の対象が、腐敗した人間じゃなく無差別だということを美香はその青年を見て理解した。
「どうしたんだい、そんなに僕ばかり見て。あぁ……僕アイドルだから君もしかして、僕のファンかい?」
「えっ……!? アイドル?」
確か、どこかで見たことあるわ。最近テレビ見ないから知らないのよね。って、何でアイドルまで実験台に……。無差別だから仕方ないか。
「残念だけど今はまだサインあげられないよ。何せこんなかっこうだしね」
そう言うと、青年は苦い表情を作り、「はははっ」と笑った。
そう、今は何も出来ない。ただ実験が始まるのを待つことのみ。
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