スペードのエース

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ある日のこと、 僕たちは例によってワイワイと大富豪を楽しんでいた。 すると、 お弁当を食べ終わった美弥がなんだかこっちを見てるような気がして、 それとなく寺田くんの肩越しに目線を上げると、 『やばっ…。』 美弥とばっちり目が合ってしまった。 かなり焦ってしまって 反射的に目線を落としたけど、 美弥の瞳には、僕の思考を停止させるだけの十分な威力が備わっていて…。 …。 「おいっ、よしろうの番だぜっ!何ボーッとしてんだよ!」 革命が決まりまくって本日絶好調のマモルに突っ込まれてしまった。 「あぁ、ごめん。パスだ…。」 あぁ、こちらは調子が出ない…。 すると、 お弁当を食べ終わった美弥が、 珍しく自分の席に戻ってきて、 なんと、僕達のトランプを眺めはじめたのだ。 そして、 寺田くんお得意のシブリを見て、 一緒になって笑ったりなんかしている。 確かに、その日の寺田くんのシブリは面白かった。 いつもよりシブリにキレがあった。 でもその時、僕は笑いながら別のことを考えていたんだ…。 『あぁ、美弥とトランプができたらどれほど幸せだろうか。』 その美弥は今、 机から身を乗り出して、 僕の手札を後ろから覗いてる恰好だ。
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