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「皆島……。こういうことは、してはいけない。僕はそう思う」
「うるさい」
「君の今の気持ちをあててやろうか。
虚しい、だろ」
「見えもしない相手怒らせて楽しいか」
サエギは首を横に振って唇を引きむすぶ。
何度目のいさかいか、両者共に、もう覚えていない。数え切れない。しかし何度でも繰り返す。
冷静になって彼らは気づく。
これは有意義なことであると。
だから彼らは今でも言いたいことを相手にぶつけることができる。
しかし他人にはそんなことをできやしないという真実に、彼らはまだ気づいていない。
「あのな、いつも思ってたんだけど、お前の話し方本気で苛つく」
「僕だって君の傲慢さ加減が酷く神経を逆撫でしてくるようで腹が立っていたんだ。その上猫っかぶりの気色悪い笑顔が気にくわなくて仕方がなかった」
「口だけは達者か。女々しくってかなわねえ。俺はすかした奴が一番大嫌ぇなんだよ」
「そこまで言うか普通!」
「お前がそれを言うか! このッ殴らせろ」
「嫌だ! 酷い!」
低俗になってしまえば喧嘩はすぐに終わりをみせる。
この後、きっと皆島は疲れて寝入ったサエギの目を無理矢理開かせようとするだろう。
そこでまた一悶着。
互いの理解に遠いのか、それとも、近いのか。
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