三つ目

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 サエギは目を潤す涙に気づき、うつ向く。  そしてサエギの前を通りかかった皆島にとってその光景はひとたまりもない。彼は奇妙に反応した。  効果音をつけるならば「ぎょっ」。  「意味が分からない」  思わずといった風に呟いた皆島に気づき、サエギは公園に駆け込んだ。  遊具のどかんに潜りじわじわと溢れる涙を拭う。  皆島は理不尽な思いでいっぱいだった。それを井先と加ヶ利に悟られまいと表情をつくる。  公園を通り過ぎた。  小さな挙動不審のあと、皆島は携帯電話のフラップを音をたてて開けた。 「やっべえ。ちと俺、道戻るわ。何か親呼んでる」  皆島にとって迫真の演技。 「は? お前ん家この先だろ」  井先の言葉に皆島が回れ右をしながらおざなりに答える。 「ちげえよ。あっち車。今学校の前に来てんだって。多分買い物。じゃあな」  なめらかに動く皆島の舌。  走り去った彼に、残された二人は怪訝な顔を見合わせていた。  皆島が公園にたどり着いたとき、辺りはすでに暗くなっていた。  皆島はちらと西の空を見、顔をしかめてどかんを見た。  それほど急いで来たわけでもないのに、唾を飲み込み、大きく息を吐き出す。  どかんに近づき、苔の生えたコンクリートに片足をかける。
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