二つ目

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 相手の事を理解できないと分かった人間の行動パターンは幾種類あるものか。  十人十色。千差万別。  その言葉のいかに不確かなものか。しかし言葉は見えないからと言って理解できないわけではない。  それは「見える」がイコール「理解できる」ことを前提としている。  ならば人は見えるのか、それとも見えないのか。 「見えないだろうね」  部屋の中央に皆島とサエギが胡座をかいて向かい合わせに座っていた。  皆島の右手には油性の黒ペンが握られている。  そしてサエギの両目には白い手ぬぐいが巻かれていた。  黒ペンが皆島の手の中でくるりと回る。 「なんで?」  つまらなそうに問う低い声にサエギはまた「見えないだろうよ」と返す。 「だって今君が言っている人間って肉体ではなく人間の本質を指すのだろう? なら、人間とは不可視な存在だ。逆に言えば人間の肉体が可視のものだから人は相手を理解可能だと錯覚するんだ」  皆島の回していた黒ペンがテーブルの端にかつんと当たる。  その鋭い音に反応して、いったんサエギは口を閉ざすが、また性懲りもなく開く。
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