二つ目

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「サエギ君。体が無意識に逃げているようだけど?」 「む、無意味だ。こんなこと。成功するはずがない。阿呆じゃないんだろ君は!」 「馬鹿かもな」 「本音はッ」 「俺さ、無意味でも何でも、面白いことするの大好きなんだ。そこはいくら俺が見えないサエギでも理解済みだろ」 「やっぱり無意味って分かってるんじゃないか!」  先ほどの人間が見える見えないの話以前に、どうしたらサエギが皆島を見ることができるようになるかを彼らは話し合っていた。  そこで双眼鏡から始まり、眼鏡やサングラスやゴーグル、鏡や下敷きを使って見ることを試してみたのだ。  何かのフィルターや媒介を通してみれば何か現状打破のきっかけになるやもしれぬといった藁にもすがる思いだった。今になってそんな切実さはサエギだけだったとサエギ自身思い知る。  皆島が目隠しの上から目の玉を描いてみたらどうかと提案したのだ。  実物の目で見えないのなら、紛い物の目でなら見えるかもしれないと解説したのは皆島だった。  真剣な表情こそが紛い物であって裏腹にサエギをおちょくる算段をしていたのだ。 「なんて、酷い……」  さすがのサエギでも皆島のいたずらによって、もし、顔中いたるところに落書きでもされたら立ち直れない。 「おい。動くなよ」
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