二つ目

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 動きたくとも動けない力で押さえつけられたサエギは観念して、皆島にされるがままだった。  閉じた瞼の上を布一枚隔てペン先が動く。  皆島はまたいつものごとく鼻歌を歌う。  寸の間、途切れる鼻歌とともにペン先も止まる。バランスを見定めてから慎重に目隠しの上から目を描く。  サエギは鼻歌が途切れる度にヒヤヒヤしている。  彼らは滑稽なことをしている。あまりに無意味なことをしている。言ってしまえばわざわざ時間と労力の浪費をしているのだ。  ただそれは彼らにとってまったく無意義なことではない。  彼ら自身、このことに気づきながらも有意義な行動を推し進めているのだ。  ふと、また鼻歌とペンが止まった。だが今度はなかなか再開しない。  このとき皆島は、自分を見つめる瞳をとらえた。  凹凸もなく、血の通わない白黒の瞳。  初めてだった。皆島はサエギの視線を得るという体験をした。  紛い物。  自分が言った言葉が思い出される。高揚とした気分が一瞬にして萎える。  ペン先を乱暴にキャップへ押し込む。指に黒いインクがつくのもお構いなしに。  皆島はサエギの目隠しをむしり取った。
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