いつもと違う朝

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午前6時 この街にいつもの朝が訪れる 公園をジョギングする男女の足音、朝食の支度を始める音 起きなさい・・まだ眠い・・そんな会話が響き一つの街の音楽を奏で始める。 いつもと変わらない、春の朝。 今は4月10日 春が訪れまだ間もなく、休みぼけの学生がふらふらと道路を埋め 同じ色、同じ年頃の若者が群を成して同じ目的地へと歩き出す。 それはまるで働き蟻の大群のように。 そして、オフィス街でもそれは見られるが、様相は少し違う。 似た色、幅のある年齢層がそれぞれのビルへと流れ込む、蟻塚を目まぐるしく動くかの様に。 人間は蟻に似てる。 オフィス街 数々の企業が自社のビルを建て、決められた時間に限り、次か次へと人が出入りを繰り返す。 そんなオフィス街でも有数の高層ビル。 壁面はほぼ全てがガラス張りで、中が見えぬよう、紺色のコーティングを施されたガラスが、その黒々とした体に穏やかな春の日差しを反射している。 そのビルの屋上に非日常が降り立った。 黒いガラスと鉄のフレームで支えられた真っ白いコンクリートがむき出しにされ、いくつもの換気用のダクトや空調の為に設けられた突起が真っ白い肌に規則的に並び、無機質な建造物をより無機質に飾り立てている。 その突起の間、屋上に上がるための出入り口からもソレは見て取れるであろう場所に転がっていた。    死 体 それは、このビルの社員だったのであろう。 灰色のスーツに白いシャツ、少し長めの髪はしっかりと切りそろえられ、整った顔立ちの上に乗っている。 年のころは20台後半から30台前半のように見えるが、襟元につけられた襟章が誇らしげにキラキラと光っているのを見ると重役クラス、ならば40近いのかもしれない。 生きていたころはさぞモテたであろう、その整った顔にはすでに血の気は無く死の恐怖を存分に味わったのであろう顔は歪み、口と目を限界まで開き自らの血で作り上げた池に横たわる。 彼はいつからそこにいたのだろう。 午前9時05分 彼は、この日ビルの清掃を請け負っていた業者の人間に発見される。 「ガラスを拭くためのゴンドラ設置に屋上に来たらみつけたんです・・・」 青ざめた顔で第一発見者は語っていた。
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