448人が本棚に入れています
本棚に追加
「ゆるさない……絶対……ゆるさない」
イリアは涙声でそう言う。
「…………」
無言のラクス。
否、何も言えない。
だから謝ることしかできず、黙って聞くことしか出来ない。
「償ってもらうから……」
「うん」
「六年分の寂しさを……」
「うん」
「六年分の涙を……」
「うん」
「六年分の……愛情で返してよ……?」
イリアはラクスの胸に埋もれていた顔を上げ、ラクスに言った。
「……うん」
ラクスは静かにそう言って、再びイリアを強く優しく暖かく抱きしめた――
▽
「じゃあ、始めるかイリア」
ラクスはイリアから程よく間合いをとった状態で、イリアに言った。
「そうですね、ラクス」
イリアの言葉の後、二人は同時に頷いて詠唱し始めた。
そして数秒後――
「『黒鳳』」
先に詠唱し終わったのはイリアの方だった。
イリアがそう言った瞬間、黒炎のフェニックスがラクスに向かって飛翔した――
ドゴーンッ――
そのフェニックスはラクスに直撃し、爆音が響く。
それと同時に、イリアとラクスを覆っていた炎の壁は消えていった――
「攻撃は重傷にならないようには手加減しました。ここには有能な魔法使いがそろっていますから、今日中には治ると思います」
イリアは黒煙のあがるラクスがいた場所にそう言って、ステージから降りようとした――
最初のコメントを投稿しよう!