хⅢх~お買い物、そして学園入学~

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    「ゆるさない……絶対……ゆるさない」    イリアは涙声でそう言う。 「…………」  無言のラクス。  否、何も言えない。  だから謝ることしかできず、黙って聞くことしか出来ない。 「償ってもらうから……」 「うん」 「六年分の寂しさを……」 「うん」 「六年分の涙を……」 「うん」 「六年分の……愛情で返してよ……?」  イリアはラクスの胸に埋もれていた顔を上げ、ラクスに言った。 「……うん」  ラクスは静かにそう言って、再びイリアを強く優しく暖かく抱きしめた――        ▽ 「じゃあ、始めるかイリア」  ラクスはイリアから程よく間合いをとった状態で、イリアに言った。 「そうですね、ラクス」  イリアの言葉の後、二人は同時に頷いて詠唱し始めた。  そして数秒後―― 「『黒鳳』」  先に詠唱し終わったのはイリアの方だった。  イリアがそう言った瞬間、黒炎のフェニックスがラクスに向かって飛翔した―― ドゴーンッ――  そのフェニックスはラクスに直撃し、爆音が響く。  それと同時に、イリアとラクスを覆っていた炎の壁は消えていった―― 「攻撃は重傷にならないようには手加減しました。ここには有能な魔法使いがそろっていますから、今日中には治ると思います」  イリアは黒煙のあがるラクスがいた場所にそう言って、ステージから降りようとした――    
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