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旅人は立て続けに3発発砲し、その場から2歩程度左に避けた。そのまま、腰のポーチに入っている強化型の手榴弾を素早く取り出し、安全ピンを抜いた。この手榴弾は、彼女が独自に開発したもので、激しい爆音を響かせ、爆煙と共に細かい破片を撒き散らして損傷を与える。その威力は一般の手榴弾の3倍を誇るものだった。
旅人は手榴弾をランスに投げつけ、残りの3発も打ち込んだ。
激しい爆音が岩場中に響き渡り、爆煙が空に舞い上がった。「これを食らって生きていた人はいないわ。これでランスさんもバラバラなはず…」
ーバシュンッ
舞い上がる煙を何かが切り裂いた。風が連れ去った煙の晴れたそこをは、しっかりと大地を踏みしめて立っているランスの姿があった。その手には身の丈程長く、雪のように白く、流れる水のような輝きを放っている刀が握られていた。
「…な…んで…?」
ランスは、驚きを隠せないでいる旅人を無視して刀を構えた。その体制のまま、目にもとまらぬ速さで旅人に斬りかかった。
旅人はとっさに反応して、ランスの攻撃をかわした。
「どうしてあの衝撃に耐えられたの!?絶対回避は不可能なはずよ!なのに、何で貴方は立っていられるの?」
ランスはカバンの中から小さな瓶を取り出した。中には丸いビー玉のようなものが幾つか入っていた。
その瓶の中から、ランスは浅黒い色をした玉を取り出した。
「己の能力でくたばれ」
ーパリーン
ランスは玉を砕いた。旅人は黙って立っていた。
ランスの周りにはガラスの破片が、花びらのような鮮血と共に散らばっていた。旅人の姿はどこにも見当たらなかった。ランスは、誰に言う訳でもなく、小さく言い放った。
「永遠に、サヨナラ…」
しかし、その呟きは戦いの後に吹き荒れる怒涛の疾風に消され、リアードにすら聞こえなかった。
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