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蝉の声が響く季節が過ぎ、鈴虫がなく夜更けに真っ黒い髪の青年が、電柱の上に立っている。
涼し気な夜、月明かりに照らされて空は、漆黒ではなく少し深いブルーにみえる。
黒髪の青年は、俯き、その顔はハッキリとは見えない、しかし、微かに見えた左目は、鋭く光りをともしていた。
今日は満月・・・。
雲の切れ目から、満月が覗かせ、青年の顔を照らして行く。
「キレイだ……」
呟くと背中から翼が生えた。満月と雲の間まで、全速力で上昇する。
そして、そこまで来ると身体を流れに任せる様にフワフワと浮かせ、雲の上から満月を見た。
今度は、ハッキリと強気な彼の顔が見える。
「来い。」
呟きと同時に強い風邪が吹き、彼は、突然現れた無数の何かに囲まれる。
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