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どれほどの時が経ったのか。
なかなかこない痛みに、少年は細く目を開ける。しかし次の瞬間それは大きく見開かれた。
「えっ……?」
さっきまで目の前にいたはずの“ソレ”は姿を消し、代わりに鎧を身に纏い、剣を手に持った男がいた。
「大丈夫?」
男は剣を腰に差すと手を少年へと差し伸べる。
「あ……はい……」
怪我をしていない左手でその手を掴むと、男は腕を上げ少年を立たせた。
「あ、あの……」
「右腕出して。治療するから」
戸惑う少年はなかなか右腕を上げない。そこで男は少年の腕を掴み、無理矢理上げさせ、傷口に透明の軟膏を塗る。
すると突然傷が熱を発し、少年は熱さに顔をしかめる。発熱が落ち着いた時、痛みは残っているものの傷口は完全に塞がった。
「すご……」
初めて見る光景に、少年は感嘆の言葉を漏らす。それを聞いた男はくすりと笑った。
「他に怪我は?」
「あ……ないです……」
「そう。だったら夜が近い、早く家に帰るんだ」
「お大事に」と、男は少年に背を向け歩きだす。
夕陽に照らされた燃えるような赤い髪と銀色に輝く鎧とが、少年の目に、心に、深く深く焼き付けられた。
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