第二章

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  少し赤みを帯びた、深みのある色の街。 淡い光の中で遊ぶ鳥達のさえずりが街を目覚めさせる。 そのレンガ調の街の中心には、重厚ながらも暖かみを持つ、他よりも一際目立つ大きな建物。 そこから放物線を描く道々には、黒の制服を身につけた少年少女が時折見受けられる。 彼等は皆、一点を目指し歩みを進めていた。分岐する道が一つに交わったのはその建物の入口。 小さな家よりも高い塀の唯一の切れ目を埋める鉄の真っ黒な門は、全てを受け入れるように大きくあけ開かれていた。 始業時刻より早い故、昼間よりも静かな校舎。 そこを歩く人影が一つ。それはくせのある赤い髪に楕円形の眼鏡をかけた少年だった。 少女にも見える童顔に、漆黒の瞳。そんな彼は脇目も振らずに歩いている。 着いた先は【2‐B】と書かれた教室。中には40近くはあろう机。 少年は前から3つ目の窓際の席に腰掛け、まだ誰もいない部屋の中、鞄から取り出した本を読み出した。 「よっ、セイカ!」 それから数十分、教室が賑わい始めた中、相も変わらず読書を続ける少年に話しかける1人の少年。 セイカと呼ばれた赤髪の少年は顔をそちらに向け、口を開く。 「あ、キア。おはよ」 「なーに読んでんだ?」 キアと呼ばれた金髪の少年はセイカの隣に座り、本を取り上げる。 「『複合属性の応用理論』? 頭が痛くなりそうだな……」 題名を見てから、ぱらぱらとページをめくる。そして顔をしかめながら本を返した。
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