第二章

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  「どうしたの?」 「ふふふ、聞いて驚くな。俺は今それを持っている!」 キアは大声でそう叫ぶと、鞄から1冊の本を取出し、掲げる。 その表紙には確かに『1年 魔法基礎学』と書かれていた。 「へー、珍しいこともあるもんだね」 「明日は嵐だな」 「まだまだ寒いから吹雪かも」 「お前等っ、これは褒めるとこだろっ!」 感嘆するセイカと、淡々と呟くヤシロ。そんな2人にキアは地団駄を踏んだ。 「どうせ間違えたんだろ?」 そんなキアをヤシロは冷めた深緑の瞳で見る。 「違うっ! 2年の教科書を無くしたから、先生にばれないよう誤魔化してるんだ!」 「そっちの方がどうかと思うけど……」 青の目でヤシロを睨みつつ、堂々とそう言う。怒りと自信に満ちた彼に、セイカの突っ込みが届くことは無かった。 そんないざこざがあったにも関わらず、最終的にキアは教科書をヤシロに貸す。 これは何だかんだ言っても仲の良い証拠であった。 「……やっぱそうだよな。ありがとう」 ため息と共に本を閉じ、ヤシロはそれをキアに手渡す。 キアはそれを受け取ると、乱暴に鞄へと突っ込んだ。
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