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開いたドアの先で、先ず目に飛び込んだのは太陽の光であった。
ドアの向かいに大きめの窓があり、それが東に位置する為か、一直線に視界を遮り、リルムは目を細める。
「……リルム?」
ふと、どうして医者はカーテンを閉めなかったのかという疑問がリルムの頭に浮かんだときであった。
病室の中から、聞きなれた、というよりも聞き飽きた男の声が聞こえてくる。
降り注ぐ太陽光に目が慣れてくると、部屋の内装が視界に入ってきた。
ベッドの上ではトーマスがぱちくりと目を開いて、ドアを開いたリルムを見ている。
「うそ……父上……」
あまりの事に、リルムはぽかんと開いた口が塞がらない。
気のせいと思った声にしたがって、リルムは走ってきた。あまりにも突拍子も無いきっかけであった。
「父上……ぢぢうえ……」
気がつけば、リルムは泣きじゃくりながらトーマスに飛びついていた。
「ぢぢうえぇ! 良かった、よがっだぁあ!
……うええぇぇん!」
それは誰にも見せた事の無い、無邪気な。ただ無邪気な子供の泣き声がトーマスの病室に響き渡った。
――当のトーマス自身は意識が戻ったものの、リルムに飛びつかれたおかげで、痛みに気を失いそうになっていたのだが……。
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