6916人が本棚に入れています
本棚に追加
泡を吹いていたトーマスを見て、リルムは慌ててナースコールで医者を呼んだ。
駆けつけてきてくれたのはジャックである。迅速な対応あってか、トーマスは直ぐにまた復活し、大事には至らなかった。
「ふぅ……リルムちゃん、聞いた話だと、先程タウル殿にも同じことをしたそうだね。気をつけてくれ、病人に飛びつく癖は……」
ジャックはため息を付きながら厳重注意をするのだが、リルムは笑ってごまかしていた。
無邪気なリルムの顔を見て、どこか暖かい気持ちになったのか、ジャックはリルムの頭を叩いて部屋の外へ歩き出す。
「じゃあ、一通りの処置はしたので、また何かあったらいつでも呼んでください。
私はこれで……」
ジャックはそう言って一礼し、部屋を後にする。
「……心配かけてしまったみたいだな、リルム。
……すまなかったな」
依然として、トーマスは包帯でぐるぐる巻きにされた体であったが、その顔は満面の笑みを浮かべている。
「そんな顔で謝るな……説得力0に等しいぞ! 嬉しいなら嬉しいと言えば良かろう!」
「……ははは。そうだな。
嬉しいよ。もう見れないと思った顔が今、目の前にあるんだからな」
それからリルムとトーマスは2人で、太陽が天に昇るまで他愛も無い話で盛り上がる。リルムは、眠気が限界に達したとき、すやすやとベッドを枕代わりにして寝息を立てだした。
最初のコメントを投稿しよう!