第2章

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詩にはこうあった。 君が臣の道を乱し、五常を敗(ヤブ)る 冀州の蘇護、永遠(トワ)に商に入朝せず 詩を書き終えると、家来を引き連れ、さっさと自分の国へと去っていった。 午門の守りについている内臣が伏して奏上した。 「午門の壁に蘇護が謀反の詩を書き付けていきました。いかがしたものでしょうか」 側近が問題の詩を書き写し、紂王の前のテーブルの上に広げ、紂王は、一目見るなり罵った。 「無礼な悪党めが!わしは仏のような慈悲であやつの命を助け、罪を許して帰国させたのではないか。それを蘇護の奴、謀反の詩を書きつけて朝廷を辱しめるとは、赦せん!」 そして命を下した。 「殷破敗、晁田、魯雄らを呼べ。6軍を出陣させる。わしは自ら兵を率いて遠征し、奴めの国を滅ぼしてくれるわ!」 取り次ぎ役が魯雄らに招集をかけた。まもなく魯雄らが姿を現し、紂王に拝礼した。 紂王は言った。 「蘇護は商に反逆し、午門の壁に謀反の詩を書いて朝廷を辱しめた。捨てておくわけにはいかない。その方らは20万の兵を率いて先鋒を務めよ。わしも6軍を率いて、奴に思い知らせてくれるわ」 魯雄はこれを聞き、うつむいて考えをめぐらした。 (蘇護は忠義な人物だのに、一体何故ここまで怒らせるような事なったのだろうか。このままでは冀州はおしまいだ) そこで、魯雄は平伏して、蘇護の為に口を開いた。 「蘇護が陛下に逆らったとしても、陛下が御自ら出征されるには及びません。まして、今は4大諸侯がいずれもまだ帰国せず都にいるのですから、大諸侯1人か2人を征伐に向かわせ、蘇護を捕らえて処刑すれば宜しいです。征伐の威信を落とす事もなく、陛下ご自身が遠征される必要も御座いません」 紂王はたずねた。 「誰を征伐に行かせればよいだろう?」 すると、傍らの費仲が口をはさんだ。
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