第2章

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「冀州は崇侯虎の直轄地ですから、崇侯虎に征伐させるのが宜しいでしょう」 魯雄はこれを聞いて考えた。 (崇侯虎は貪欲で卑劣な上に残虐な男。遠征させれば、兵の行くところ荒らされ放題、民衆がひどい目に。だが、西伯侯の姫昌は仁徳豊かで信義に厚い人物と聞く。姫昌を推薦したほうが全ての為というもの) そこで、魯雄はすぐに申し出た。 「崇侯虎殿は北方の守りについておられますが、その恩徳と信義には今一つ不安があり、朝廷の威徳を十分に示すとこが出来るかどうか。それより、仁義に厚いと評判の西伯侯姫昌殿こそ適役と存じます。西伯侯に割符(カツプ)と斧鉞(フエツ=天子が下す征伐の印)を授ければ、いたずらに軍を動かす事もなく、蘇護を捕らえて処罰する事が出来るでしょ」 紂王はしばらく考えた後、魯雄の案も取り上げ、西伯侯姫昌と北伯侯虎侯虎の2人に割符と斧鉞を与えて遠征させる事にした。使者がその命令を手に顕慶殿に向かった。 この時、4人の大諸侯と2人の丞相は、まだ先程の宴会の途中だった。そこへ突然、天子の使者が現れたので、一同は何事だろうと驚いた。 「西伯侯、北伯侯、天子のお言葉である」 2侯は席を立ってひざまずいた。 内容は冀州侯蘇護が商に叛意を示した為2人に討伐を命じた。 使者が読み終えると、2人は使者に礼を述べて立ち上がった。 姫昌は丞相2人と他の大諸侯にはかった。 「蘇護は商王(紂王)に拝礼に来てまで朝廷にも参らず、天子にもお会いしてはないのに、謀反とは一体どういう事なのだろう?そもそも蘇護は忠義の人で戦功も多い。天子は何者かの讒言を(ザンゲン)聞き入れ、功有る臣下を討伐せよとしているのではないのだろうか?もしそうならば天下の諸侯は納得しないだろう。申し訳無いが、商容殿、比干殿、明日入朝して、陛下に蘇護が一体何の罪を犯したのか、ご確認頂けないだろうか。理由のある事なら討伐いたそう。しかし、もしそうでないなら、うかうかと討伐に向かうわけにはいかない」 「それはもっともな事です」 と、比干が答えた。 しかし、傍らから崇侯虎が口を開いた。 「既に君主の詔書が下った今、その命に誰が背けよう。天子が理由も無くこの様な事を言われる訳が無い。もし、800諸侯が君主の命に従わず、勝手に振る舞えばどうなる。君主の命は意味を無くし天下大乱が引き起こる事、必定ではない」
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