第2章

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姫昌は言った。 「それはごもっとも。しかし、やはりある一面の理屈でしかない。蘇護は忠良な君子で、国に尽くし、民の教化に努め、兵を率いて戦に功績を立て、数年来、過ちを犯した事は無い。それを今、天子が何者かに惑わされ、忠臣の罪を問う等と言うことになれば、この国が乱れる兆しというもの。」 戦が起こらず、殺しあいもなく、太平のうちに事が済むなら、それが一番良いのだ。戦は不幸なものだ。軍が通れば、民は必ず被害を被る。民が苦しむ財物を傷つけ、兵を乱用する事は武を汚すもと。正しい理由の無い出兵や討伐は、太平な世に起こすべきものではない」 だが崇侯虎は引かない。 「それはそうかも知れないが、君命であればやむを得ぬ。命は下ったのだ。あえてそれに逆らい、君主を欺く事は許されぬ」 姫昌は言った。 「わかった。では、貴公は先に軍を率いて出立されるがよい。私の軍はそのあとに続く事にしよう」 それでその場は解散となった。 姫昌は商容と比干に言った。 「崇侯虎殿は先に出発されるが、私はまず西岐(セイキ)に戻り、軍を率いてそれに続くつもりです」 翌日、崇侯虎は練兵場で兵馬整え、朝廷に別れを告げると、軍を率いて出立した。 一方、蘇護は朝歌を離れ、将兵らとともに冀州に戻り着いた。長男の蘇全忠が武将を従え、一同を出迎えた。 「今の天子はもうだめだ。天下の諸侯が拝礼に集まったなか、どこぞのつまらぬ者が、わしには美しい娘がいるなどと言ったらしい。昏君はわしを大殿に呼び、娘を后妃に差し出せなどと言い出したのだ。わしは諫めたのだが、かえって怒らせ、わしは聖旨に逆らったという罪で取り押さえられた。費仲と尤渾のとりなして帰国は許されたが、それもわしが自ら娘を差し出すことを狙った企みだ。怒りに任せて午門の壁に謀反の詩をしたためてきたから、昏君はわしを処分する為にきっと大諸侯を送ってくるだろう。皆の者、よいか。兵馬を訓練し、城壁の上に丸太や石を積んで、諸侯の城攻めに備えるのだ!」
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