第2章

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諸将は蘇護の命に従って、日夜抜かり無く守りを固め、戦に備えた。 さて、崇侯虎の方は5万の兵馬を率いてその日に出陣し、朝歌をあとに冀州へ向けて進軍していた。大軍は州、府、県の道を越えて、1日も休む事無く進んだ。 「先頭の軍は既に冀州に着き、千歳(センザイ=親王や王侯に対する尊称)のご指示をまっております」 崇侯虎は、営舎を設営するよう全軍に命じた。崇侯虎が陣営を置くと、早くもその知らせは馬で冀州に届いた。 蘇護はたずねた。 「敵の将は誰だ?」 物見は答えた。 「北伯侯の崇侯虎です」 これを聞くと、蘇護は腹を立てた。 「もし、他の諸侯であれば話し合う余地もあるだろうが、奴は日頃から行いのよくない人物、道理を説いても無駄だろう。ならば、この機に奴の軍を破り、我が軍の威を示し、民の為、禍(ワザワイ)を取り除くにしくはなし、だ」 兵を選び城外で迎え撃つべく命令を下った。武将等はこの命に従い、各自武器を手に城外へ出た。砲音一声、殺気は天を揺るがす。 城門の前で軍が横一列に並んだところで、蘇護は大声で相手方に呼ばわった。 「主将を軍営前へ連れてこい。聞きたい事がある」 崇侯虎側は、この事を報告した。 やがて軍営の門が開き、馬にまたがった崇侯虎が武将を率いて出てきた。 前には二面の竜鳳旗(リュウホウキ)がなびき、後ろには長男の崇応彪(スウオウヒョウ)が控えている。 崇侯虎は飛鳳のかぶとをかぶり、金鎖の鎧をまとい、赤い長衣をなびかせ、腰には玉の帯を締め、赤い駿馬に乗り、鞍(クラ)には大刀を差している。 蘇護は馬上で決身(上半身を起こして敬意を表す)した。 「鎧兜をまとっている故、正式な挨拶はお許し願いたい。それがしは、今は自分の国の辺境を守っているところだが、賢侯は何故、軍を率いておられる?」 これを聞いて、崇侯虎は怒った。 「貴様、よくも天子の命に逆らって、午門に謀反の詩を書き、乱臣賊子となり下ったな。その罪はこの上なく大きく、貴様の生命でも償いきれぬわ。俺がここにやって来たのは、天子の命により貴様の罪を問う為だ。軍営の前に平伏し、罪を認めるべきところを、小賢しくも言い訳し、鎧兜を身にまとい、武力で抵抗とは言語道断!」
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