第2章

11/15
前へ
/187ページ
次へ
崇侯虎は左右を見て言った。 「誰が、わしの為にあの逆賊を取り押さえる者はおらぬか?」 左端から武将が前に出た。 「それがしが、捕らえてやりましょうぞ」 大声を放ったのは、鳳の翼型の兜に、黄金の鎧をまとい、赤い長衣をなびかせ、腰に獅子模様の帯を締め、青の駿馬に乗った武将の梅武(バイブ)だった。 「お前の相手は俺がしよう」 冀州側では、相手の陣から武将が進み出たのを見て、蘇護の息子蘇全忠が軍陣から出て、手にした武器を構えた。 梅武は言った。 「蘇全忠、貴様ら親子はよくも朝廷を裏切り、天子を怒らせたな。一刻も早く武器を捨て罪に服せ。我ら天兵に歯向かえば、自ら滅びを招く事になるぞ!」 蘇全忠は戦馬を鞭うち、戟(ゲキ=戈(カ))と矛を組み合わせた形の武器)を揺すって梅武目掛けて繰り出した。梅武も手中の斧をかざして迎え撃った。 2頭の馬が相交わること20回、蘇全忠は一撃で梅武を貫き、馬上から落とした。 蘇護は息子が勝ったのを見て、ただちに進軍の陣太鼓を鳴らさせた。 冀州の上大将趙丙(チョウヘイ)、陳季貞(チンキテイ)が馬に乗り、大刀をさげて突進する。 どっと声が上がると、殺伐とした空気が立ち上ぼり、陽は輝き死体は野原に散らばり、血は流れて河となった。 崇侯虎の麾下の金葵(キンキ)、黄元済(コウゲンサイ)は、やむ無く防戦しながら撤退し、10里(約39㌔㍍)以上も後退した。 蘇護は銅鑼(ドラ)を鳴らして兵を引き上げ、城内の帥府に戻って大殿に座り、手柄を立てた武将に褒美を与え労った。 「今の戦は大勝したが、相手は必ず兵を整え仇を討ちに来るか、援軍を求めに行くだろう。何れにしても冀州が危うい事に変わりはない。どうしたものだろうか?」 言葉の終わらぬうちに、副将の趙丙が進み出て言った。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加