序章

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はじめ世界は混沌(コントン)としていた。 それを天と地に分けたのが盤古(バンコ)だった。 女カ(ジョカ)はこの生まれたばかりの新世界に人間を創って住まわせた。 伏羲(フッキ)は八卦を描き文字を創って人間に与え、神農(シンノウ)は百草を嘗(ナ)めて毒と薬を教えた。 こうした太古の天神達は天界に住み、遠く下界の人間達を見守っていた。 やがて人間達の中に、徳を積み修行に励み、不老長寿と道術を身につけた仙人が現れはじめた。 仙人達は、人界から分かれ、霊山に住み、洞府を開いて独自の世界……仙界を創りだした。 そして、長い間、天界、仙界、人界は互いの境界をおかす事無く、平和な時が流れていった。 ところが、時代が下っていくにつれ、この秩序が崩れはじめた。 仙界では、仙人の身ながら根行の不足している者、また人界でも、人間の身なのに玄術を会得している者などが現れて、ふたつの世界の境界線があいまいなってきたのだ。 そこで、天界より天命が下った。 新たに神界を創って、そうした者達を神に封じようというのだ。 さっそく仙界の重鎮の太上老君(タイジョウロウクン)、闡(セン)教教祖の元始天尊(ゲンシテンソン)、截(セツ)教教祖の通天教主(ツウテンキョウシュ)らが集まって、神に封じるべき365人の名を記した「封神榜(ボウ=リスト)」が作られた。 だが、神となる者達は、いったん死ななければならない。 この大量殺戮を円滑に行う為、教主達は商から周への易姓(エキセイ=姓を変える)革命を利用する事にした。 王朝の姓が易(カ)わって世が革(アラタ)められる易姓革命には当然、大規模な戦いが起こる。 教主達は「封神榜」に名が記された者達をこの戦いによって殺し、神界に入れようと考えたのだ。 封神は天命である。 ならば、その手段たる易姓革命も天命だった。 こうした天命によって、商朝最後の王に定められた紂王(チュウオウ)は、やがて自らも知らぬまに、自滅への道を踏み出す事になるのだった。
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