その3 住み込みワーク

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朝は4時ちょい前に起きなきゃ間に合わない。 そして、チャリンコの前カゴに目一杯、後ろの荷台にも縛り付ける。 1区域だいたい200~300部を、『ト書き』と言われる特殊な文字の地図を使い配る。 僕が任されたのは上野の歓楽街。 前カゴの半端じゃなさは、慣れれば何とかなった。 ただ、甘ちゃんの浪人生から一転しての新聞配達。 辛かった。 色んな意味で。 そんな中、ホシヤマさん(仮名)という先輩に出会う。 4浪してる横浜のイケメン。 カッコ良かった、とにかく。 赤いWinstonを吸い、数々の女を取り替え引き替え。 僕はすぐに彼の影響を受けてしまった。 次第に仕事は適当になってきた。 しまいには、新聞約100部を、捨てた。(今思い出すと、ごめんなさいです!) 所長はやさしい人だったのだ。 でもさすがにそんなデタラメな人間を雇えず、しかし僕は予備校の奨学金をもらってしまったのでクビにすると全額返済になるので、板橋のきつい地域に飛ばされる事になった。 勢いだけの10代の僕、さすがに落ち込んだ。 ホシヤマさんみたいにカッコ良くアウトローしたかったのだ。 結果クビ同然になるなんて思ってなかった。 無茶な、無謀な10代の僕は、元ヤクザの板橋の主任の運転で、板橋区へと運ばれていったのだった。
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