さいしょの話。

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さいしょの話。

 それは夏休みの宿題だったんだ。  そんなコト、僕はすっかり忘れていたけど。  あの日はとても暑い日だったのを覚えている。  「なあタツヤ。何時にする?」  その日、僕の家にやってきたクラスメイトのアキラ。  僕の悪友だ。  「なんのこと?」  僕はTVゲームの画面に集中していた。  コントローラーを離す気もなかった。  でもそれはアキラも同じ。  「忘れてないだろうな、学級新聞」  そう言ってアキラは必殺技を使ってきた。  「え? うん。てか、ズルい」  僕は聞き流した。  だって今、それ所じゃないもの。  この技をくらったら、ハメ技街道まっしぐら。  うまくかわして、カウンターで……なんて考えてたら残り体力削られて、結局競り負けた。  「……卑怯だよ」  僕はアキラに不満を言ってコントローラーを投げた。  「おまえ弱いだけじゃん。それより、七不思議の話だけどな」  僕は、ようやく思い出した。  うん、そうだ。だから今日はアキラが家に来たんだった。  夏休みの宿題。  班ごとに自由研究をして、学級新聞にまとめなきゃいけないんだっけ。  で、僕たちの選んだ題材が「七不思議」だったわけ。  「でも、ホントに入るの? 学校に……」  「絶対バレない。大丈夫だって。後でシンゴとミユキも来るから」  ゴメン、そーゆー事じゃなくて。  でも、怖いから嫌、なんて言ったら笑うんだろうな……。  ……それもみんなで。  仕方ない。  うん。  お化けなんて無いさ、みんな嘘。寝ぼけた人がムニャムニャなのさ。  だから怖い訳はないんだ。  「じゃあ、今から行こう」  僕は立ち上がった。  そしたら、空気の読めないアキラは、きょとんとして僕の腕を引っ張った。  「まだ昼だぞ? 夜まで待とうぜ!」  ふーん。なるほど、やっぱりそうくるワケなんだ。
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