1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
現状把握のため、生い茂る草木の間から辺りの様子を探ろうとした時、誰かの視線を感じ、ショウは咄嗟に身を伏せた。
(見つかった!?)
激しく脈打つ心臓と、声を出しそうになる口を必死に抑え、額を地面に擦り付けるように体制を低くし、周りの草木に同化する。
カムフラージュ柄の上着と、揃いのバンダナが役に立った。
数十秒後、ショウは恐る恐る顔を上げた。
辺りには誰もいない。
視線を感じたと思ったのは気のせいだったのだろうか?
「ショウ!」
極めて間近で、不意に呼ばれビクリと身を震わせた。
見れば左手側にある広葉樹の陰から、青い帽子の男が手を振っている。
その姿に安堵のため息を漏らし、名を呼ぼうとしたが、男が人差し指を口に添え「静かに」のジェスチャーでそれを制す。
キョロキョロと辺りを伺い、素早い動きで、それでいて音を立てずにショウのいる茂みまで走る。
幸い誰にも気付かれることはなかった。
「タク…」
駆け込んで来た青い帽子の男は再び人差し指を立て、小声で言った。
「作戦は失敗だ」
「えっ!?」
最初のコメントを投稿しよう!